オペラについて  
 オペラは、授業ではカルメンヘンゼルとグレーテルトスカトゥーランドットをとりあげました。

1年目の2015年にはトスカとヘンゼルとグレーテル、カルメンを、翌2016年には手直ししてトゥーランドット、カルメン、ヘンゼルとグレーテルを題材にしました。

オペラの資料PDFは10ページがありますが、内容は以下のようになっています。

(1)
カルメンのあらすじ
(2)
カルメンの主要登場人物
(3)
カルメンのワークシート
(4)
ヘンゼルとグレーテルの解説
(5)ヘンゼルとグレーテルのワークシート
(6)
トスカのあらすじ
(7)トスカのワークシート
(8)
トゥーランドットのあらすじ
(9)
トゥーランドットのあらすじの続き
(10)
トゥーランドットのワークシート


オペラ関係の資料全体 pdf版

オペラの曲選びについて

オペラのDVDについて

現代演出について

 
カルメン (あらすじなど詳細はPDF資料で)
カルメンでは
「衛兵の交替」「ハバネラ」「ジプシーの踊り」「闘牛士の歌」「花の歌」「第3幕の幕冒頭」「最後のフィナーレ」をC.クライバー ウィーン国立歌劇場 のDVDを見せました。

この作品は曲が良く知られており、食いつきは良く反応も良かったです。
(カルメンと闘牛士が主役かと思っていたものが多かったです。)クライバーのDVDは映像の質がいまいちなのですが、演奏が特に素晴らしいのでこれが良いと判断しました。
ドンホセはドミンゴですね。
 
ヘンゼルとグレーテル(あらすじなど詳細はPDF資料で)
「魔笛」や「ヘンゼルとグレーテル」が子供に最初にみせるオペラとして欧米ではスタンダードのようです。
とにかく楽しいので、ぜひおすすめします。
わかりやすいのでこれもとても好評でした。

「ヘンゼルとグレーテルが仕事をさぼって踊ってしまうあたりからお母さん登場まで」
「お父さんの登場のシーン」
「夜になって二人が森の中でお祈りして眠るところ」
「翌朝お菓子の家を見つけるところ」
「魔女の魔法の歌 ホーカスポーカス」
「魔女をやっつけてからフィナーレまで」


ここではメトロポリタン歌劇場の上演(英語)のDVDを使ったのですが、魔女の仮装や宙乗りなど誰が見ても最高に楽しいです。宗教色がやや強い作品なので、必要によっては断りをいれておきます。

PDF版にも書いてありますが、「いつも神様が助けて・・・とはいうけれども、結局解決しているのは子供の知恵じゃないか(神様は何をやったのか いや逆にとても深いメッセージなのか)」「魔女も子供も親も生き物はやはり食べ物から離れられないという生についての根本のメッセージ=だから童話は普遍的」などを考えると、童話の深さに感動してしまいます。

 
トスカ (あらすじなど詳細はPDF資料で)

世界中のオペラハウスで、上演機会の多いオペラは、やはり「トスカ」、「カルメン」あたりだろうと思います。凝縮度の高い、極めて劇的で、アリアも名曲です。

「トスカ」では、「愛に生き恋に生き」、「星はきらめき」のアリアで観衆をひきつけ、テデウムできわめて邪悪に、エンディングの投身の場面では身の毛もよだつようゾクゾク感がこのオペラの醍醐味でしょう。

授業では、
「冒頭の部分」、「第1幕のトスカとカヴァラドッシのデュエット」、「テデウム」、第2幕「愛に生き恋に生き」、第2幕「スカルピアの殺害から最後まで」、第3幕「星はきらめき」、「最後の処刑からトスカの投身エンディング」あたりを見せました。

有名なアリアですが若者は、
「この程度のアリアでもテンポは遅く長く感じる者も多い」と思います。「愛に生き恋に生き」、「星はきらめき」、「テデウム」がなんとか聞けないようでは、「トスカ」は無理でしょう。

ここではカバイヴァンスカ、バルトレッティ指揮のオペラ映画のDVDを使いました。画面は美しく、流れる音楽以外は現実の事件のように見えますし、現地ロケのト書きの通りの城や教会、王宮がリアルです。が、もちろん劇場ライブではありません。そういう点で他の劇場ライブですぐれたDVDもあるかもしれません。
2年目の時はトスカは断念して教材をトゥーランドットに変更しました。
カバラドッシはドミンゴ、スカルピアはミルンズです。
PDF資料よりも少し詳しいあらすじ
PDF資料よりもかなり詳しいあらすじ
愛に生きの歌詞と訳とディクション

 
トゥーランドット (あらすじなど詳細はPDF資料で)
私はこの作品は好きで、ライブもかなり見ましたし、DVDもかなり所持しています。しかしオペラとしての出来栄えとしては、やはり「真の傑作」まではいかないのではないかと私は考えています。
歌劇では
「音楽」「劇全体の構成」が完全なものが、真の傑作

●そもそも
未完成のトゥーランドットはまず傑作の資格に疑問がある

●プッチーニは健気で芯の強い女性が好みで(男性は問題のある役)、この作品では実は
リューが一番重要、とするとリューの死はもっともこの作品のクライマックス、だから

リューの死&犠牲→自己中心的な登場人物の意識が変化→フィナーレ

という流れでのフィナーレが、書き切れていないのでないか

この2点がポイントかと思います。

トゥーランドットはプッチーニの死後弟子のアルファーノが
加筆完成したのですが、初演指揮のトスカニーニが完成版を大幅にカットして、現在その形で出版されてほとんどの上演がその形で演奏されている。

しかしやはりリューの死のあとの結末がすっきりしない。なんだかとってつけたようなフィナーレなんですね。「氷のような姫君」とだれがとめても謎に挑戦したカラフですからね。変化するには、もう少しなんらかの工夫が必要なのかと思います。

アルファーノ版以外の完成版、
ベリオ版では「リューの死で皆がショックを受けておしまい」という衝撃的なエンディングですが、まだ多くの支持には至っていません。(ゲルギエフ ウィーン国立歌劇場 2002ザルツブルク音楽祭)

ですが、「主役なアリアの素晴らしさ」、「東洋風の素材を生かしたグランドオペラ風のダイナミックな盛り上がり」とかやはり
幻想的なオペラとして大きな魅力があるし、誰も寝てはならぬは皆知っているし・・・とおもって2年目は教材にしました。

このオペラでは
「冒頭からティムールとリューの登場まで」「トゥーランドットの登場とペルシャの王子の処刑のあたり」「王子様お聞きくださいから第1幕の最後まで」
「第2幕の頭を少しだけ見せてピンポンパンを紹介」「皇帝の登場」「第一の謎」「カラフからの出題」
「誰も寝てはならぬ」「リューの死」「カラフが自分の名前を明かしてからフィナーレまで」

をレヴァインのメトロポリタント版で見せました。メトの映像はわかりやすくて舞台は豪華で私たちの思い描くトゥーランドットそのものずばりの演出です。

(その他ではブレゲンツ湖上音楽祭2015年のライブ、紫禁城をつかった北京の舞踊団などもでてくるメータの1998年ライブなどもおススメです。でもメトが一番わかりやすいです。)
左からメトロポリタンのDVD、紫禁城野外ステージのメータ版

これがベリオ版↓すごい衣装。↓「トリスタンとイゾルデ」のようだ。

 
授業とは別に演奏会の練習用に石井が作った他のファイルも提示しておきます。
メリーウィドウ
ラ・ボエーム
学生王子
道化師

アイーダ (古いファイルで質問形式)
 
<オペラの曲選び>
曲選びについては
(1)筋のわかりやすいもの
(2)歌の技巧をみせることが中心のような作品は避ける
(3)作品の価値が高く、舞台として劇的な効果の高い曲で、また見たいと思わせるもの
を選ぶようことを考えました。

にしましたが、上記方針で吟味して上記の通りとしました。 2年目にメニューを手直ししました。
 
オペラのDVDの選び方>
オペラはDVDも多く、選べる範囲は広く使いやすいのですが、画質や演奏など極めて幅が広いです。オペラでは、「オペラの映画」と「実際の舞台の上演の記録」と大きく分けて2つのDVDがあります。

映画の場合は、森の中や教会など撮影場所はリアルでわかりやすく、演奏も別テイクなので一定のレベルはキープされていることが多いです。劇場の高揚感はありません。

舞台は舞台だから森の中である必要はないそれが舞台、というのが劇場ライブの映像で、緊張感や観客との一体感は当然ありますが、細かい表情はみにくい、ライブ特有の演奏上の傷が多少はある、舞台が暗かったりカメラが引きだとなんだか進行がよくわからない、(特に屋外での上演などで)上演の都合がある、などが欠点。

授業ではどちらも一長一短。特に理由がない場合は、新しいもので、スタンダードな演出が良く、生徒がつっこみたくなるような演出(若者役が高齢者、あまりに変わった衣装とか)を避けた方が良いと思います。
 
<他のオペラのDVDの紹介>

カルメン  1987メトロポリタン レヴァイン バルツァ カレーラス
何もまずくはないのだが、クライバーと比較すると何か物足りない。
カルメンは難しい。

バタフライ 2004アレーナディヴェローナ オーレン チェドリンス ジョルダーニ
この演出なら私たちに違和感はない。ゼッフィレッリだけに野外ステージとは思えない舞台やさすがでしかも幻想的で詩情にあふれている。

こうもり 1980ウィーン国立歌劇場 シェンク ルチアポップ クンツ ファスベンダー
いつみても楽しいこうもりだが、この時代は特別。グルヴェローヴァのアデーレ、ファスベンダーの公爵

ボエーム カラヤン ゼッフィレッリ演出 フレーニ ライモンディ
ゼッフィレッリのボエームは二幕の雑踏と三幕の詩情が素晴らしい。この写真は三幕だが、この場面だけでこのオペラのすべてが凝縮されているよう。
ボエームあらすじ
魔笛 1983バイエルン国立歌劇場 サヴァリッシュ アライサ ルチアポップ グルヴェローヴァ
この写真の冒頭のヘビとか、パパゲーノとかとっても楽しい。しかも夜の女王はグルヴェローヴァの全盛期。
ちょっと古くなった感もあるが、安定した舞台。

マイスタージンガー 1995ベルリンドイツオペラ デブルゴス ブレンデル ヴィンベリー ヨハンソン

スタンダードな舞台と演出。ブレンデルのザックスが素晴らしく、指揮のブルゴスもフィナーレの「マイスターをあなどらないで」から曲にひきつけ、最後はベックメッサーとも舞台で和解させて、ト書きの通りザックスの頭に冠がかぶせられるとスポーツの試合のような爽快感がある。

ポーギーとベス 1986ロンドン ラトル ウィラードホワイト シンシアヘイモン
グラインドボーンで上演したキャスト、スタッフ、演出をそのまま映画スタジオに持ち込んだ映画スタイル。この作品の魅力をだした映像だが、そもそものこの作品の「現代性」みたいなものに共感できるかどうかが問われてしまう。

バタフライ 1974 カラヤン フレーニ ドミンゴ
ジャンピエールポネルの演出の映画版なのだが、このジャケットに違和感の方も多いだろう。しかもはじまったとたんに、家から飛び出すピンカートン そして回想 となるのだが、うーんさてと思ってしまう。演奏は良いのにさっぱり舞台に共感できない自分が居てしまう。

道化師 1982 ミラノ プレートル ドミンゴ ストラータス
映画版なので、陰惨な場面がやや幻想かかってみえる。このオペラをみているといつもゴッドファーザー3とかフェリーニの「道」とかを思い出してしまう。ここではドミンゴが秀逸に歌い演技をしていてひきつけられるが、ネッダにあと一歩の表現が欲しくもある。
道化師関係ファイル
カヴァレリア=ルスティカーナ 1982ミラノ プレートル ドミンゴ オブラスツォワ
これも映画版。舞台よりもシチリアの田園や居酒屋などが画面では使えるので、より本質は伝わりやすいとも言える。ゼッフィレッリがこのあと、ストラータスの「椿姫」へと舞台から映像へと広がりをみせていくひとつ前の映画オペラ。ドミンゴはもちろんルチアのバルビエリが大きな存在感で演技している。


 
 
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